はじめから見る方は→ここから



chapter-5 出発

静かな朝。
入り込んだホテルの窓からは湾内が見渡せる。
岸壁には早朝のイカ釣りを楽しむ壮年感染者がぽつりぽつり。

これまで一度も使っていない釣り竿をつかんだロシェルがおもむろに立ち上がった。
「私、せっかくだから釣りしてくる。」

サビキのしかけしか付いていなかったので、ロシェルはアジを狙う事に。
しばらくすると壮年感染者が近づいてきた。

「ロー!気をつけろ!」
ホテルのフロントから見守る3人。
助けに行くつもりはないらしい。




「よう、ねーさん。釣れちょるか。」
「なんだぁ、全然釣れちょらんがや。見せてみぃ。あー、こらダメだわ。替えてごすわ。」
壮年感染者は、ロシェルの釣り具をとりあげて、自分の基地へ持ち去った。

不思議と恐怖はなかった。
しばらくすると壮年感染者が戻ってきた。





fishingのコピー
「サーーービーーーーキーーーーィーー・・・」



「ねーさん。こいで釣れっわ。やってみーな。」
「ねーさん、イカはいらんか。ごさーか。袋がないか。待っちょけよ。」



元々日本語は分からないが、それを差し引いてもわからない。
しかし、どうやらコレで釣れるらしい、やってみるといいらしい。
イカをくれるらしい。
なるほど、面白いように釣れる。
「ようねーさん。釣れちょっがや。こぅ、イカごすけん持って帰らっしゃいな」
ふれあいタウンピアと書かれたビニール袋にずっしりイカが入っていた。

「thank you」


感染者に礼を言うことがあるなんて。ロシェルは自分に驚いていた。


ロシェルはホテルへ戻った。イカを持って。
フロントに沸いたハンター風情の男が言う。

お客さん、船に乗るならそろそろ行った方がいいですよ。
イカをお持ちなら、発砲スチロールの箱がいりますか?

手際よくイカが詰め直された。
案内されるままにフェリーに乗り込む。

他の乗客たちはカーペットのしかれた部分に毛布を広げて寝たり座ったりしている。
椅子がない。

4人は椅子がないかと船内を探した。
すると、甲板には椅子が整然とならんでいる。

ニック「こっちのほうがいいじゃないか。」

エリス「ヘイ!もうすぐ出航だぞ!ヒャッハー!」


ボォオオオオオオ!

汽笛だ。その音は湾を囲む山に反響して幾度も鳴り響いた。

マズい。顔を見合わせた4人。
岸壁を見ると感染者の群れが押し寄せ、こちらを見ている。
「サーーヨーーナラーーー!」
「マタゴザイナーー!」
さらに大音響で民族風の音楽が流れてきた。
感染者たちの叫び声と船からの噴射、そして音楽が入り交じる。
興奮は最高潮に達している。

一斉に攻撃が始まった。

感染者の群れが岸から色とりどりの巻紙を投げつけてくる。
それは船に届いたり、届かぬまま海へ落ちていったり。
岸壁から離れる船を引き止めるかのようだった。





okikisenのコピー






生存者は脱出した。






岸からはなれ、全ての紙がちぎれると、
船が島に手を振るようにその紙が潮風にはためいた。



「また、来よう。ここに。OKI ISLANDSに。」








チャプター5まとめ
隠岐は絵の島 花の島(民謡「しげさ節」より)
女一人で釣りをしてると、そこらへんのおじさんがあれこれ世話してくれる。
イカをくれる。イサキとか、つれたもの適当にもういらん、ちゅーほどくれる。
ふれあいタウンピアは、私がいた頃と別ものになっちゃってた。
フェリー乗客の発砲スチロール箱所持率が高い。
船出の時のカラーテープ見送りは何度見ても他人事でもちょっといいもの。
転勤シーズンとか、すごいテープの量。
だけど流れる民謡のボリュームがでか過ぎだと思う。
せっかくだから、お暇なら隠岐に遊びに行ってみてね。


イカがでしたでしょうか。
すっかり地元紹介でした。


防波堤
こんな感じで堤防でぼんやり、が一番お勧めです。